「会社を変える会議」とは、いったいどういうものなのか。
そのような論点で、著者が実際に起業したときに体験した会議のやり方をまとめた『すごい会議』という本がある。
会議の司会というのは、思ったより簡単なことではない。
そこで、会議の参加者に「このような順番で、このような質問をすれば」という形で、すぐにでも実践できるものとして、抜粋しまとめてみた。
組織でもチームでも、全員に「イケル」感じがしていると、高い成果を生み出しやすくなる。
逆に「クライ」感じがしていると、成果を出すのにものすごく余分なエネルギーを使う。
どうしても見つからなければ「部屋の電気がついている」ことでもかまわないので、それを書く。
「うまくいっていること」をシェアすることで、いままで見えていなかった「うまくいっていること」が見えてくる。
「この間実家に帰ったら、その日は機嫌が悪かったのかお母さんの愚痴がとても多かったんです。
そこで私が、『最近なにが、うまくいってる?』と聞いたら
『そうそう田舎から新米が送られて来たのよ!』と、とたんに明るい感じになって話し始めたんですよ。」
これと似たようなことが、会議室でも起こる。
うまくいっていることを聞くと、会議のムードを良くする環境を作り出すことができるのだ。
例:「2016年3月31日までに33%のマーケットシェアを勝ち得ることにより、業界のナンバーワンカンパニーになる」
「達成したいことはなにか?」の質問は、あなたの意思への質問であり、
なにが「可能」かというあなたのイマジネーションへのチャレンジ。
答えは5秒で書く。
5秒で書いても1週間悩んで書いても、86%答えは同じ。
とにかく、書いてから考える。あとでより良い答えが出たら、そのとき変えればいい。
組織やグループで目標を立てるメリットはなんだろう?
やるべきことがわかる。
達成したかどうかわかる。
進む方向が一致する。
やる気が出る。
…いろいろあるかもしれないが、それらが起こることによって一番のメリットは、
「目標を立てなければ起こらなかったことの実現可能性が最大化する」ことだ。
実は多くの会議の参加者は「呼ばれたから来ている」ことが多い。
つまり、それは自らの意思を持っていないということ。
参加者に「会議への期待」を書いてもらうことで、それをすでに持っている人はそれが明確になるし、なかった人はその場で創られる。
人は、自ら創った目標は達成しよう、という意欲を持つ傾向がある。
そして、その期待を会議が終わった時点で得られるかどうかの鍵を握っているのは誰かを考える。
1.司会者?
2.社長?(部長?グループリーダー?)
3.自分自身?
下手をすると、参加者は、司会者やリーダーにその責任があると思っている(じっさいにそれは否定できない)。
しかし、それでは「普通の会議」のやり方だ。
参加者がどういう気持ちで会議に参加するほうがうまくいくだろうか?―そこを考えてもらうのが「すごい会議」のやり方となる。
その会議が成功するかどうかは、準備段階で8割決まる。
望む成果がはっきりしているか?それを得るために、一番効果的と思えるメンバーだけが参加しているか?
望むビジネスの成果を得るのに、「何をマネージすればうまくいくか」を6つほど書き出し、
「それをマネージするには誰を呼べばうまくいくか」を書き出す。
参加メンバーが決まったら、自分自身が会議で得たい成果、そして参加者に何を期待するかを明確にしたメールを参加者に「招待状」として送る。
例:「資金が足りない」→「どのようにすれば資金を得られるだろうか?」
「現行の製品が売れていない」→「どのようにすれば製品が売れるか?」
「次の製品のプランがない」→「どのようにすれば製品のプランをつくれるか?」
「会社が面白くない」→「どのようにすれば会社が面白くなるか?」
「できない説明ではなく、解決策を言ってほしい」とうのは、すべての経営者が社員に対して求めていることだが、それを手に入れられる経営者は多くない。
「ところが、「どのようにすれば」と言い換えただけで、その状況がいとも簡単につくれてしまうのである。
『どのようにすれば会社が面白くなるか?』を、『これが起こったらいいな〜』と思うような文章にすればいい。
最初は難しかったら『日本イチ』とか『世界イチ』といった言葉を入れれば、そうなりやすい。
例えば、「どのようにすれば、渋谷イチ魅力的な会社を築けるだろうか?」というように。
言葉のフォーマットを変えただけで、新たな視点ができ、こんなにも差が出てくる。
「現行の製品は『売れていない』のではなく、製品そのものがカスだ」
↓
「どのようにすれば、すごい製品ができるか」と言い換える。
例:「僕がCEOを下ろされ、駄々をこねている」
面白いのは、最初に出てきた問題よりも、後半に出てくる「言えない問題」「ひどい真実」のほうが、経営をやっていくうえで、より重要度が高いものが出てくることだ。
これらを放っておいたままで、最初のほうに出てくる問題をなんとかしようとしても、問題の根を絶やすことはできない。
「問題の本質はなんだ?」と質問してもなかなか答えは出てこないが、このフォーマットでやると答えが出てくるから不思議だ。
これからの6〜12ヶ月で、このチームが達成する成果はなにか?
目標の1行目は、6〜12ヶ月後の日付にする。
3年後の目標を立てても、今週はなにもしない。1か月後の目標ではやれることが限られる。
そして2行目は、「売り上げ10億円」とか「利益2億円」といった具体的に測定可能なことを入れる。
3行目は、それがこのチームにとってどんな意味を持つか。
たとえば、「日本一のマネジメントコーチとして認められる」とか「世界唯一のサービスカンパニーとしてスタートの準備が整う」といった具合に、チームメンバーにとって意味があることであればなんでもかまわない。
文章ができあがり、全員に合意されたら、一番上に「We Promise,(我々は以下のことを約束します)」と書く。
単なるスローガンではなく、「約束」であることを確認する。
この約束された文章を「戦略的フォーカス」と呼ぶ。
戦略的フォーカスに、ニックネームを付ける。
例:「売上10億円宣言!」
それを達成するのに、必要不可欠な担当分野を6程度決める。
グループで行う場合は、全員が別々にこれを書き込み、その後に、全員で、1つの図にまとめる。
どんな担当分野が必要かを全員が考えることで、単なる現行の担当分野以外で、どんなことが必要かが見えてくる。
例:「開発」「マーケティング及びセールス」「製品設計」「会社のオペレーション」「カスタマーサービス」「資金」
それができたら、戦略的フォーカスを達成するのに、一番効果的な担当者をそれぞれ決める。
ここで出来上がった組織図のいままでと違うところは、
1)全員自分が必要と思っている機能は明示的にどこかに必ず入っている
2)この組織図は「オレたちがつくった」
3)上下関係が書かれていない
コミットメントの進捗を最低1週間に一度チェックするしくみを合意しておく。
例:「毎週月曜日8AM~15分ミーティングを行う」等
このリストの面白い点の一つは、進み具合の欄がX%というかたちではなく、
「このままいくと、スケジュールどおりに終わるか?でないとすれば何日遅れるか?(または早く終わるか?)」
という質問になっていることだ。
しばらく仕事してみて、
「あっとヤバイ。あれが遅れるので、これも遅れる」
というのが出てきて、
「一週間遅れそう」となると「-7」と入れる。
これがあると、スケジュール完了当時になって「できません」ではなく、1ヶ月前から「放っておくと7日間遅れる」というのが見えるので、対策が立てやすい。
クロスチェック(相互確認)のような「2度のチェック」も、何かをより確実にするための誰にもできる「方法」で、それを経営でもやると、驚くほどにその効果が表れる。
会議が終わった後にエネルギーに満ちている場合と、逆にエネルギーが減っている場合がある。
1)明確な目標が合意され、
2)自分になにが期待されるかが明確になり、
3)自ら宣言した約束がある
これがあると、会議室を出てアクションを起こしたくなる。
最後の質問は、グループメンバーへの「チャレンジに必要なエネルギー」をプレゼントするための質問である。
このように、会議の方法を変更するだけでも、会社・チーム・組織は変わると強く感じられた。
「すごい会議」とは、組織が動く出発点になるだろう。
イメージとしては、目標地点であるゴールを明確にし、スタートラインから一斉に走り出すようなものだ。
引き込まれる自伝的なストーリーとあわせ、本書巻末には「すごい会議」の手順書も付属しており、非常に楽しめかつ役立つ読み物となっている。
<関連図書>
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