朝一番のMS(マーケティング&セールス)会議で社内に革命を巻き起こす

毎朝1時間の早朝会議で企業はこれほどまでに活性化する!


いまから17年前の早朝、ドイツに本社を置く女性下着メーカー、トリンプ・インターナショナル・ジャパンの一室で、のちに”革命”をもたらすある会議がスタートした。その会議の名はMS会議。現在社長を務める吉越浩一郎氏の発案だった。


1人ひとりの能力が最大限に発揮される会議


MS会議とは、いったいどんなものなのか。

午前8時半、MS会議はスタートする。出席者は役員や社員約50名。会場のデスク中央にはOHP(オーバーヘッド・プロジェクター)があり、目前に吉越氏が座る。OHPに社員たちが書いた手書きメモが1枚置かれ、スクリーンに映し出されると、


「なんでこうなるの?」

「はい、こういう理由で……」

「おかしいじゃない。明日までに調べて報告して」

吉越氏の激が飛ぶ。と思ったら、別のテーマではこんなケースも。

「面白いね。やりましょう」

「先方と詰めまして、明後日会議で報告します」


吉越氏と社員の間に垣根はない。緊張感を漂わせながらも、互いに言いたいことを言い合う。若手社員も自分の考えを堂々と主張できる。ただ、その主張が間違っているとやり込められるのだが。

一方、驚かされるのは進行のスピードだ。目まぐるしく議題が変わり、次々と重要事項が決定されていく。ダラダラと無意味な議論が続くのが会議の通例だけに、圧倒のひと言。


午前10時、MS会議は終了。会議が終わると議事録が10時半までにイントラネットで公開される。毎回の所要時間は1時間から1時間半で、常時約50にもわたる議題が掲げられ、ハイスピードで処理されていくのだ。

「MS会議にはルールがあるんです」

と吉越氏。実はこのルールこそ、トリンプ躍進の原動力なのである。


「必ずすべての問題を分割して、『だれが、なにを、いつまでに』と徹底して決めていきます。ある問題があったら細分化して、ここはAさん、ここはBさん、ここはCさんと決める。で、いつまでにというデッドラインを決め、それを徹底的に追いかけ回すんです」

社員たちはデッドラインを絶対守らなければならない。期日は翌日が基本で、翌日のMS会議で報告を求められる。扱う案件でデッドラインは変わるが、最大限で1週間以内だという。ちなみに会議終了後にイントラネットで流される議事録には、「だれが、なにを、いつまでに」との記載がなされている。


「問題が発生した時には、会議の場ですぐ緊急対策と再発防止策で手を打ちます。目の前で火が燃えていたら、水をかけるのはだれで、いつまでに水をかけて消せと命令を出す。一方で火が出た原因を別の人に調べさせ、その内容をいつまでに報告しないさいと。こうすれば二度と同じ問題を起こさないですむ」

部門間の壁を取り払うために始まったMS会議は、コミュニケーションとあらゆる情報の共有化により、社員たちが同じベクトルで働くことを実現した。されに問題が細分化されることで、個々の役割が明確になった。そしてデッドラインの設定で仕事は自ずとスピーディーにーその結果が1人ひとりの能力を最大限に引き出すことになり、トリンプの業績向上に反映されているのは言うまでもない。

 

会社の仕事はすべてロジカルシンキングで行え


MS会議は「社員たちを教育する場でもある」と吉越氏は言う。問題を細分化して役割を明確にしたり、「だれが、なにを、いつまでに」というルールを設ける真の意味がそこにある。

「仕事のあらゆる局面で分解・分析することをルーティン化させ、論理的に考えるクセをつけさせるためなんです」〜


前述のMS会議で提出させる手書きメモ1枚の議題も、社員に物事を単純かつ論理的に説明させるためだという。

「頭のなかで考えがまとまっていれば、どんな重要なことでも1枚の紙に凝縮できるはずなんです。それを2、3枚となるから、的を得ない会議になってしまう。〜それにパソコンのソフトを使って資料を作れば時間もかかる。形にこだわるより重要なのは中味。手書きで1枚のほうが断然速いですから」

 

朝8時半からの会議のいちばんのメリットは?


「みんなを集めて会議するには、朝が一番いいんですよ。午後だと全員を集めるのは難しくなる。〜頭のキレで言っても、朝のほうが絶対いいでしょうね。疲労がなくて、頭もスッキリした状態ですから。


〜普通の会社だと社員同士がお互い何日も会わないですよ。うちはMS会議は基本的に毎日なので、毎日朝一番で必ず顔を合わせます。そしてお互い本音で話し合うから、必然的に親しみが湧いてくる。だからうちの社員たちはみんな仲が良いですよ」