「世界共同体」の課題(1)

現代世界の直面する諸問題

先進工業諸国では、物質的生活の”豊かさ”の浪費的性格はますます強まり、先端技術の急速な発展が未来の可能性を大きく切り開くと同時に、価値ある人間生活とは何かが問い直されようとしている。


発展途上諸国の貧困からの脱却の足並みはそろわず、南北格差は広がり、アフリカでは1億5千万人が飢えの危機に瀕している。資本主義の害悪を克服して“真の”自由と繁栄をもたらすはずであった社会主義体制は、一党独裁下の自由喪失と硬直的な経済運営から浮上する道を模索している。


科学・技術と生産力の発展によって地球は相対的に小さくなり、世界各地域の相互依存性は増大して、友好と信頼が必要であるのに、米露を中核とする両体制の対立、地域的紛争の続発によって、世界の軍事支出は増大する一方である。


現代世界がこういう諸問題をかかえこむようになった歴史的経過を概観しよう。


資本主義の発展と共産主義国の誕生

急速な経済発展は産業革命から始まる。

1820年代に世界にさきがけて産業革命を完了したイギリスは、それから約半世紀の間「世界の工場」として圧倒的な優位を保持した。

だが、19世紀後半、特に1870年代以降、ドイツ、アメリカ、フランスなど後発資本主義諸国の成長につれて、海外市場・領土の獲得・拡大競争が激化した。


強国間の利害衝突は第1次世界対戦を引き起こした。

戦争の荒廃の中から、共産主義国ソ連が生まれ、疲弊した西欧資本主義は体制的危機に襲われた。

それを切り抜けさせたのがアメリカの融資を軸心とするドーズ案体制であり、1920年代後半には繁栄期が訪れた。

しかし、アメリカに始まった29年の大恐慌は、世界を未曾有の大量失業、倒産、社会不安の嵐に巻き込んだ。


諸国間の自由な経済交流は、閉鎖的なブロック間の抗争に変わった。

極左・極右勢力の対立の中からドイツ・ナチズム、イタリア・ファシズムが台頭した。

結末は第2次世界対戦であった。


一方、ソ連は1928年に始まった第1次5ヵ年計画以来、重工業と国防工業を急速に発展させた。その反面、スターリンの農業集団化強行の結果、大飢饉が起こって数百万人が餓死し、彼の非情残酷な粛清は大量の犠牲者を出した。「鉄のカーテン」にさえぎられた外部世界では、当時一般の人々はそれを知らなかった。